Jawohl

出会ったのは随分前のことでした。

今はもう別の営業形態となっている近所の本屋でQ.E.D.の単行本と出合い、その掲載誌であるマガジンGREATを読み、パンプキン・シザーズって変わったタイトルだなあなんて思いながら読んだら途中からでもめちゃくちゃ面白くて（雑誌にはそういう面がありますね）、単行本を集め、そこからわりとすぐのアニメ化に驚きました。

アニメはすみません、もったいないことに当時あまり熱心に見れてはいませんでした。（今は一枚で出ているBlu-rayを購入しています。付属小冊子の表紙、破壊力がすごかった！！）

しばらくは単行本を買っていました。

舞踏会編の最後、矢面に立つことを選んだ貴族と武器を下ろせた蜂起側、権限を委任する書面の意味。

カルッセルの街の閉塞感と打破、もう一組の「伍長と少尉」の関係、一部分だけ動いたジャガーノート、町長の声。

0番地区でアリスが出した「戦災とは何か、どうなったら復興と言えるのか」の答えにはしびれました。確かにそうだ、と。「人生の外から来た力」は、戦災に限らず世の中にありふれていて、そのことに対する処方箋をもらったように思いました。

束の間の平穏な部分もありつつ、今まで描写されなかった上司の初登場や、合同会議の期待と同時に帝都の裏側で蠢く「何か」。

会議が始まり「カウプラン」がこの世界においてどんなことをしている存在であるのかが明かされ……いざ動き出した「蠍」の蜂起とその暴れ方のおぞましさ。

帝国側が後手後手に回るこのあたりから、連載を雑誌で追いかけるようになりました。

作中でテロが起きてから、目が離せない展開が続いていたためです。

カウプランがどんな意図で伍長に施術をしていたのかが明かされ、テロを仕掛けている蠍を「しかし彼らも帝国民である」として、人として立ち向かいに行く少尉、満身創痍になりながらも、蠍に所属する各人の個別の凄惨な事情を、さらなるおぞましさで押し潰すような伍長の戦い。

そして、辛い思いをしつつも戦い続けたハーケンマイヤーと、彼女をきっかけに、正義とは何であるか、シャウラとの対話において言葉を磨くようにして紡がれた「アリス・L・マルヴィンの正義」。

……そんな中の告白でぶっとびました。ここまでつらく苦しい流れが続いていて、でもそれが全部吹っ飛ばされたような……作中で「大きな爆弾をきれいに爆発させるにはそれなりの準備が必要」と言われていたように、この衝撃の準備が1巻から21巻の前段階ではなかったか、とすら思うほどでした。

ここだけでも最高でしたが、更にその次、少尉が自分からすら隠していた「名乗り」！

本作品を、主人公二人の関係性を中心とした三課の話である、と定義した時、この「告白から名乗り」の部分で希代の名作であると満足できます。

連載再開を待っていた時、そのことを慰めにしていたところはありました。それくらいこの部分は良かった。

けれど本作はそれだけが描かれているわけではありません。共和国と帝国薄氷の停戦、国と国との関係、帝国の過去の負債、過去の異形の天才の存在、未だ明らかにならない結社の存在、それらが絡み合い、もつれあって今までに続く長い長い「五日目」。

その続きが読めそうなことが、とても嬉しいです。

休載の四年間で、現実の世界情勢は大きく変わりました。

私は、その変容が岩永先生の筆を止める原因となったのでは、と考えていました。

けれど、今、再始動するということは……できるという事実は、少なくともそれにまつわる憂いは消え、現実は現実として、作品世界は作品世界として先に進められるというお考えからくることなのでは……？

または、4年という期間で、その世界の変容すら飲みこんで先に進んでいける……と判断されたのでは？

どちらであるか、どちらでもないのか。

その結果を読めることに、あとたった20日を待てることに、ワクワクしています。

連載再開、本当におめでとうございます。続ける気持ちを持ってくださっていて、ありがとうございます。

……という文章を、ついったのキャンペーン用に、だらだら振り返り感想を書いたのでこっちに転記しときます。やったぜ！！！

あとここを読んでくれている人向けのお得情報ですが、再開情報が乗っている2024年4月号は、裏表紙見返しが21巻表紙をB5サイズにしたビジュアル（月マガ公式の再開告知tweet画像そのまま）で、でかめの物理伍少が拝めて最高ですよ。

（どうでもいいけどこのついっと、日付と曜日が食い違ってて締め切りが悩ましい……3/19は火曜っすよ）